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中米コスタリカ, エコツアー

軍隊を放棄、自然を残した国
コスタリカ,Costa Rica


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http://www.usfl.com/


ボクにとって「コスタリカ」は、名前だけは知っていても、それ以外はあいまいなイメージしか沸かない国だった。カメラマン仲間からコスタリカの自然の魅力を聞かされて、「いつかは行ってみよう」と思いながらも、なかなか計画できなかったのにはそんなことも原因している。そんなボクに「コスタリカのエコツーリズムを取材しないか」というお誘いがあった。「渡りに船」と思い、1週間の旅に出た。


中米コスタリカは、地理的には南米と北米大陸を結ぶ細長い連結部の中央に位置し、南をパナマ、北をニカラグアと接している。北部をカリブ海に、南側は北太平洋に挟まれ、今でも煙を上げる活火山の下には温泉がわき、熱帯雨林、乾燥林、また世界的にも珍しい雲霧林とその独特な地形はまた他にない特異な自然を作り出している。  
米国からは数都市から首都サンホゼへの直行便が出ており、マイアミの近くに住むボクの場合、アメリカン航空の直行便でたったの約3時間。料金も米国の国内線と変わらないくらいで、思ったよりもかなり近い国だった。  
南北アメリカ大陸の交差点であるコスタリカは、九州と四国を合わせたくらいの小さな国土に約400万人が住んでいる。現在、国土の25%が自然保護区に指定されており、地球の総面積の0.03%に過ぎない小さな国土には、地球上の動植物種の約5%が生息していると言われている。コスタリカが自然保護に取り組み始めたのは30年近くも前と言われ、環境に配慮しながらその土地の自然や文化に触れ合うエコツーリズムを発祥させ、現在、エコツーリズム先進国としての地位を確立している。

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なぜ、コスタリカは世界に先駆けて環境問題に取り組んだのか? ボクがコスタリカの人たちと直に接して感じたのは、争いごとを好まない、おっとりとした性格の人たちが多いということだ。これは、この国が第2次大戦後(1948年)に軍隊を放棄し、それ以来中立国でありつづけていることにも関係しているのではないだろうか。周辺国が内戦やクーデターで立ち後れているのに比べ、軍隊を放棄したコスタリカは軍事費を教育や福祉に回すことで、現在の安定した経済を築き上げたと言われる。かつてのコスタリカの主な産業は、コーヒーやバナナの輸出、そして畜産業などで、半世紀ほど前には豊かな森林が伐採されて牧場に姿を変えていた。しかし、1960年代初頭から畜産業の不況を経験し、人々は自国にとって何が一番大切かを知ることとなった。前にもあげたが、煙を上げる活火山の他に、世界的にも珍しい、霧に覆われた熱帯雲霧林や、乾燥林、湿潤林といった全く異なる生態系を持ち、カリブ海と太平洋に挟まれた美しい海岸線には海ガメの産卵地や、珍しい海洋生物が見れることで有名なスポットもある。こうした特異な自然環境に注目したのは自然科学者だった。彼らはこの国にとって森林の保護がいかに大切かを大統領に進言、以後コスタリカ政府は牧場を買い上げ、国立公園や自然保護区が次々に誕生し、緑がよみがえったのである。そして、エコツーリズムを代表とする観光業がこの国の主産業に成長した。

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リンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園  コスタリカでは、国内24カ所の国立公園のうち、3カ所がこれまでに世界遺産に制定されている。その中の一つ、西部の太平洋岸に位置するグアナカステ保全地区は、一度開拓され牧場となった後、国がその土地を買い上げ再生林としてよみがえらせた非常に珍しい国立公園だ(1999年に世界自然遺産に指定)。 ボクが参加したエコツアーは、このグアナカステ地区の北に位置するリンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園からスタート。運良くマスターガイドのパコと日本人ガイドの高橋藍子さんが主催するツアーに参加できた。
ガイド歴15年のパコは、フロリダの大学で英語と鳥類学を学んだ後、コスタリカに戻りガイドになったという。かたや、日本人の父親とコスタリカ人の母親を持つ藍子さんは、コスタリカにある日本人学校で日本語を学んだといい、完璧な日本語の読み書きができる美しい女性だ。パコに比べてガイド歴は短いものの、日本人の心を持った美しい女性の案内にツアーの楽しさは倍増した。長い間外国で暮らし、しばらくぶりで日本に帰ると、若者たちが日本人の良き心を失っているのに失望した経験が何度もあるが、ボクはこのコスタリカで生まれ育った藍子さんに古き良き日本人の心を感じた。 
すでに他界した彼女の父は、26年前に日本から南米への移民を運ぶ最後の船に乗り1カ月もかけて一人でコスタリカにやって来た冒険旅行のパイオニア。そんな父親の血を引く彼女は、最初大学で畜産を勉強したものの、動物を生産物として扱うことに抵抗を覚え、アルバイトで始めたガイドの仕事がそのまま本職となったという。「この小さな国を客観的でなく、私の国として紹介できることに誇りを感じるのです」。日本人の父親とコスタリカ人の母親、そして自分が生まれた国を目を輝かせながら誇りを持って紹介する彼女に、さわやかさを感じた。  エコツアーの先進国だけあってコスタリカには優秀なガイドがたくさんいるらしいが、パコや藍子さんの動植物を見つける驚異的な感覚には驚かされた。それは「動物的な感覚」という表現がまさにぴったり。森の中の生き物を見つけるとすかさず数秒で望遠鏡をセットしてボクたちツアー客にサービスする。それに鳥類から植物まで、生物の知識の深さに驚かされた。アメリカの国立公園でもエコツアーのプログラムを取り入れているところもあり、レンジャー(森林警備隊員)がツアー客を先導する姿をよく見かけるが、コスタリカでは、レンジャーの数よりプロのガイドの方が多いくらいだった。
リンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園の地下では火山のマグマが活動していて、森の中のトレイルを抜けると硫黄の匂いが鼻をくすぐり、日本の温泉を思い出して心地よかった。さらに奥に進むと、マグマの熱でグツグツと沸騰している泥の池が現れた。ここの泥には美容効果があるらしく、危険を冒してまで顔のパック用の泥を盗みにくる人がいるらしい。美しくなるためには、死をも恐れない? 女は強よし、ということか!?  

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これまでのボクの旅は、写真を撮るのが大きな目的で、今回のように雨の中を泥まみれになりながら歩くということはあまりなかった。しかし、このツアーで味わう心地よさは何だろう。ずぶ濡れになりながら滑る泥と格闘する、自然と一体となれた心地良さだと思った。今まで自然をこんなに近くに感じたことはなかったような気がする。遠くの木の枝で吠えサルの威嚇する声が聞こえていた。雨で滑る吊り橋を渡り最後の林を抜けると、太平洋に沈む夕日が雨雲を裂いて真っ赤に燃えていた。

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ガナカステ国立公園  2日間、リンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園を歩き回った後、ガナカステ国立公園へと移動した。ガナカステ国立公園はリンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園から車でほんの数時間北西に上がっただけなのに、周りの様相はがらりと変わってアフリカのサバンナに似た乾燥林になった。湿潤林だったリンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園では、木々が鬱蒼と茂っていたのに比べ、ここでは日の光をサンサンと浴びて水分が少ないせいか木々は低く育っていた。  

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1659メートルのココア火山はつねに頂上に煙をたなびかせ、西側の海岸線はサンタロサ国立公園となっており、この辺り一帯が保護地区に指定されている。  木々の隙間から差し込む太陽の光が、この乾燥林では気持ち良く感じられた。ボクたち一行は、珍しい植物があると立ち止まってはガイドの説明を聞きながら進んで行った。美しい蝶の羽ばたきや軍隊アリの長い行進を目にすると、子供の時に見た懐かしい光景がよみがえり、なんだか心が癒されていくようだった。その時、これまで鳴き声だけで姿を見せなかった吠えサル(マント吠えサル)がついに姿を現した。ボクたちが一番興奮した瞬間だった。幸運なことに吠えザルに続き、今度は手足の長いクモ猿(スパイダーモンキー)まで出て来た。

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サルたちに一喜一憂しながら森の中を進むと、先生を囲んだ青空教室の小学生たちに出会った。夢は公園のレンジャーかガイドになることだという子供たちは、植物の標本を作り、生きている森から直に自然の成り立ちを学んでいた。  その澄んだ子供たちの瞳を見ていて、ふと暗く悲しい出来事が脳裏を横切った。この国の輝かしい自然保護の陰の姿ともいえる、見逃すことができない光景を目撃した。それは、一部の反対派による森への放火だ。まったく信じられないことだが、国立公園に反対する人もここには多くいるという事実を知った。


Costa Rica Costa Rica Costa Rica


もし、生まれた時から住んでいる土地が国立公園になって、立ち退かねばならなくなったら? もし、何年も昔から狩りをしていた土地が国立公園になって、猟が出来なくなったら? 無知と貧しさは、時に取り返しのつかない犯罪を犯す。森に火を点け、パークレンジャーがその消火に手間取っているうちに、生活の足しにするために密猟するのだという、犠牲になるのは、バク、ベッカリー、アグーチや鹿といった森の住民たちだ。美しい森の緑が途中で途切れて平原になっているのを、ツアー中、何カ所も見て、心が痛んだ。この無知から来る蛮行を止められるのはこの子供たちではなかろうか、子供たちは実際に生きてる森を観察し、自分たちの国にとって何が大切か学んでいる。彼らが大きくなったら自然を守る大切さを少数の無知な大人たちに分からせることができるだろう。  
パコが語った言葉が大きく心の中に残った。「コスタリカは石油も鉱山もない貧しい国だけど、僕らにはこの緑があるんだ。お金では買えない素晴らしい自然をずっと次の世代まで残して行きたい」


Costa Rica  
モンテベルデ保護区  湿潤林から乾燥林、そしてこの旅の終わりは熱帯雲霧林で有名なモンテベルデ保護区だ。首都サンホセから車で約4~5時間。モンテベルデに近づくにつれ高度が上がりはるか彼方に太平洋が現れた。公園のゲートシティ,サンタ・エリーナの狭いダウンタウンにはホテルやレストランがひしめき、世界中からの観光客であふれていた。なんと日本レストランまであるではないか。  
モンテベルデ保護区は、国立公園には指定されていないものの、自然保護のために厳しい規制が課せられていた。この公園の特徴、熱帯雲霧林と呼ばれる森はどんな森なのか?  太平洋に近いモンテベルデの森には、湿気をたっぷり含んだ空気が海から吹き込んで来る、そしてこの空気は山腹にぶつかり冷やされて、霧となり雲となり森を覆うのである。年中霧に覆われた森は独特の生態系をつくり、珍しい動植物の宝庫になっている。そして国はこの生態系を守るために公園を訪れる観光客に厳しい規制を作った。  
例えば、公園には一度に200名までの入場者しか入れない。しかも滞在時間も制限され動物を驚かせることのないよう、カメラのフラッシュも禁止されていた。これは薄暗い森の中で速い動きの鳥や動物を撮影するカメラマンにとってはハンディになるが動物たちの保護のためには仕方がない。  
一年中霧に覆われている熱帯雲霧林では、陽の当る高い木の枝には他の植物が寄生し、珍しい植生という植物たちの助け合いがこの森を活き長らえさせていた。大きな木は小さな植物(ランなど)に宿をかす代わりにその寄生した植物から水分や養分をもらっているのだという。  
この森で一番のスターはケツアールという鳥だ。この鳥はメキシコからパナマにかけての山岳地帯にのみ生息するカラフルな鳥で、手塚治虫の「火の鳥」のモデルになったことで日本では有名である。しかし、数が少ないためいつでも見られるという訳でもないらしく、特にボクたちが滞在した2日間は低気圧の影響で暴風雨だったため、鳥たちは残らずどこかに避難したらしく姿を見せることはかった。この鳥を撮るために、わざわざ500ミリの超望遠レンズを持って来たのだったが! 自然は時に意地悪だ。ケツアールに振られてボクはハミングバード(はち鳥)に狙いをかえた。  ワオー!と歓声が出る。こんなに多くのハチ鳥の姿を見た事がない。公園の外にあるハミングバードセンターには、甘い蜜の容器がところ狭ましとぶら下げられ、それを目当てにハチ鳥たちたちが集まっているのだ。

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 ブンブンと飛び回る愛くるしい鳥たちに、世界中からこの国に集まって来るバードウオッチャーたちの気持ちがわかった。  夕方になり嵐が去った。雲の切れ目から太平洋が姿を見せ真っ赤な夕日が沈んで行く。短かい滞在だったがコスタリカはカメラマンのボクにまた課題を残した。“ケツアールを写真に撮る!”ガイドの藍子さんが笑いながら言った。「コスタリカの海にはカメもいっぱい来るんですよ。いっその事こちらに移住されたらどうですか?」  ここのガイドはカメラマンの心情を一番よく知っているのである。

豆知識  


 この記事はUSフロントライン2009年8月5日号に掲載されました。 http://www.usfl.com/


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全米の国立公園全58カ所を踏破したカメラマンが、60歳を機にアメリカ探険に再挑戦。観光では行けない、大自然と野生動物たちとの出会い。そして故郷日本へ帰り日本の野生動物、心の風景そして祭りに感動、28年ぶりの「日本再発見」を紹介します。それぞれの作品はデジブックのスライドショーで楽しめます。



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